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【漫画】焰の眼(2) の感想

焔の眼(2) (アクションコミックス)極限状態は人間をここまで利己的で残酷な生き物に変えてしまうのか。光明が差したかに見えた沙羅とその周辺の人々にさらなる不幸が襲い圧倒的な鬱展開へ。クロは日本奪還を叫んでどこかへ行ってしまいました。

ドン底の底がさらに抜けた

前巻で敗戦国のドン底が描かれていたと思っていたら、沙羅たちを取り巻く状況はさらに悪化。強制移住区に押し込められ今度は同じ日本人からの嫌がらせを受けるようになります。敵国からでなく、同族で殺し合うようになり、沙羅の数少ない知り合いである花見月の同僚たちが次々に殺されていきます。いきなり松山さんが殺されたのにはショックでした。良い人から殺されていくとか。また女将恭子が沙羅を気に入っていた理由が戦時中に亡くした娘の面影を見ていたと語られますが、恭子が襲われた沙羅をみて逆上し男を殺してしまったことで、内輪の人間関係も悪化し、出て行く者も出てきましたがその慰安婦たちも殺されてしまう。ドン底の底がさらに抜けた気分とでも言いましょうか。

どちらに転んでも“死”が待っている絶望感

さらに追い打ちをかけるのは妊婦の房子が連れて行かれた隔離施設の下り。そこでは日本人の妊婦を収容し、日本人を生んだら親子共々銃殺、ショルゴール人(ハーフ)を生んだら子供は助けるが母親は銃殺という、どちらに転んでも死が待っているというもの。極めつけは、日本人強制移住区解体によって下された「強制労働」か「殺処分」の二択。労働に向いていない者はその場で殺されるという大量虐殺がはじまり、もう本当にどうしようもなく救いがありません。鬱です。

沙羅の“覚醒”がはじまる

運命に流されるばかりだった沙羅に“覚醒”の兆候が現れたのは千蔵の親父に襲われたとき、クロとの記憶がフラッシュバックして初撃をかわしました。その場はそれで取り押さえられてしまいましたが、千蔵との戦いの中で爆発的な力を発揮します。それは瞬間的なもので自らの拳を痛めてしまうなどまだまだですが、少しでも自らの力で運命を変えられたことは大いなる前進と言えるでしょう。
この後、沙羅は千蔵から親分と呼ばれ慕われるようになりました。1巻の「瓦礫の獣」の戦闘シーンを見返すと「親分」じゃなくて「お嬢」と呼んいる男がいますが、これ千蔵じゃないですかね。

そして、ラスト、絶体絶命の恭子と小夜の前に現れ、神衛隊をちぎりまくるクロに安心の安定感を感じつつ。少しだけ気持ちが救われて次巻へ続く。

作品中に出てくる日付と現実世界の出来事との紐付け。
1946年1月1日 昭和天皇の人間宣言
1946年6月3日 ?

あらすじ

1946年1月1日

ショルゴールは自国民の日本入植のため日本人の強制移送を開始、沙羅や花見月の慰安婦たちも住んでいた街を追われ、東京強制移住区 第四地区「藪椿」に収容される。そこは日本人同士で悪意が飛び交う貧民窟で、一帯を取り仕切る老婆は嫌がらせで男たちをけしかけてくる。沙羅が襲われ逆上した女将・恭子が男(千蔵の父)を殺害するに至り、嫌がらせは日々厳しくなっていく。出て行く慰安婦たちもいたが彼女たちは殺害されてしまう。
父親の敵討ちにきた千蔵と、恭子をかばって自分が殺したと答えた沙羅は殺し合いになるが、クロの言葉が甦り、徒手で撃退する事に成功する。以後、沙羅は千蔵から親分と呼ばれ慕われるようになる。

1946年6月3日

占領軍によって「藪椿」が解体となり住民の強制労働収容所送りと殺処分が開始され大量虐殺が始まるなか、沙羅と千蔵は施設に収容されている身重の房子を救出することに成功し、恭子たちのもとへ向かう。そのころ神衛隊に囲まれた恭子と小夜は、突然現れたクロの介入によって助けられる。

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